星の基礎知識

スペクトル型 HR図

星の一生

星のうぶ声 青春の日々 黄昏の日々
華麗な最期 死後の世界

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ここでは、生命を育むのに重要な役割を果たしている恒星について、星の 一生を学んでいきましょう!!
天文学の知識を身につけ、星の本質を理解することで、生命が生まれるに はどのような星がふさわしいのか分かるかも知れません。



星のうぶ声

星は、星間雲から生まれます。

星間雲とはその名の通り、星の間にある密度の低いガスとわずかな塵の集まりです。 この中には、星の原料となる炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)などあらゆる元素が含ま れています。これらは、すでに死んでしまった星たちが 超新星爆発の時に放出したものです。

星間雲の中でも、ひと際密度の高い分子雲の中で星が生成されます。

分子雲が何かのきっかけによって収縮しはじめ、ひとつの分子雲からたく さんの星が生まれます。
収縮のきっかけは、

などがあります。

収縮が進むにつれ、密度はどんどん高くなり、そのうち自分の重力で縮め るようになります。『収縮する→密度が高くなる→収縮する』を繰り返し ます。最終的には、1立方あたり10の24乗ほどの高さにまで縮みます。 しだいに中心部の温度も上昇してくると、星は赤外線を出しはじめます。
やがて、星の周りをとりまいているガスが消え、私達に見える光で輝きは じめます。 このようにして、星はうぶ声をあげるのです。
星の誕生(M16)のアニメーションはここ!! (Dynamic Document)


青春の日々
原始星

原始星とは、生まれたばかりの星の赤ちゃんのことです。

原始星の中心温度はそれほど高くないので、まだ核反応は起こりません。 原始星は、ゆっくりと縮むことによる重力エネルギーの放出により光って います。

光を出す→エネルギーを失う→温度と圧力が下がる→星が縮む→ 重力エネルギーが熱に変化→温度が前より高くなる→光を出す

この変化が連続的に起こり、星は光りながらゆっくりと半径を縮めます。 原始星が縮むにつれて中心温度は次第に上昇し、1千万度を越したところ で水素の核融合反応が生じます。こうなると、星が光るエネルギーは全て、核融合 反応でまかなえるようになり、星は収縮をやめます。そして、一定の半径 に落ち着き、主系列星になります。主系列星については、この後説明します。
星が原始星でいる期間は、星の一生にしてみればほんの一瞬にすぎません
例えば、太陽が原始星だった時間は4000万年で、10M の星なら20万年という短さです。
この理由から、原始星をみつけるのは非常に難しいといわれています。

また、近くには密度の濃い星間雲があることから、さらに原始星を見つけ にくくしています

*「M」は、「太陽質量」と読み、「10M 」だったら、
「太陽の10倍の質量」と いうことになります。

主系列星

主系列星とは、若く、働き盛りの星たちのことです。

夜空に見える大部分の星がこれに当てはまります。それらの星は中心付近 で水素をヘリウムに変えながら、安定した状態を保っています。つまり、 光として出るエネルギーと核融合で発生するエネルギーとがつり合ってい るということです。この状態は、中心付近の水素がヘリウムに変わってし まうまで続きます。星はその一生のほとんどをこの時代に費します。

主系列星の構造は比較的単純なため、いろんなことが確認されています。 星は、水素(H)とヘリウム(He)と重元素からできています。重元素とは、H とHeより重い全ての元素の総称です。中心で起こっている核融合反応は、 いわば巨大な水爆か核融合炉のようなものです。太陽も主系列星です。

星の寿命は主系列星の期間とほぼ同じといえます。ここで、星の寿命と重 さの関係についておもしろいことが分かっています。
表1を見てみましょう。

表1:主系列星の寿命

星の重さ寿命
10M 1千万年
1M 100億年
0.1M 1兆年

この表から分かるのは、「重い星ほど寿命が短く、軽い星ほど長生きする」 ということです。なぜこうなるのかというと、主系列星は重いものほど非常に 明るく輝いているので、放出するエネルギーも大きくなります。そのため、早 くも燃えつきてしまうのです。
つまり、大きい星は明るく、太く短い人生を、小さい星は暗く、細く長い人生 を歩んで行くのです。

有名な主系列星としては、おおいぬ座シリウス、こと座ベガ、ケンタウルス 座α星などがあります。


黄昏の日々

赤色巨星

赤色巨星とは、定年退職まぢかの星たちのことです。

原始星、主系列星とたどってきた星は、次に赤色巨星へと進化していきます。 その進化の過程を説明しましょう。
主系列星は、水素をヘリウムに変換する核融合反応によって輝いています。 しかし、次第に水素が少なくなってくると、中心核はつぶれます。 中心核が潰れると、中心温度は上昇し、星は膨れ、表面温度は下降します。 この繰り返しにより、星の中心部は次第に高温になり、重元素を合成しなが ら赤く巨大な星、赤色巨星へと移っていきます。

これを赤色巨星といいます。 赤色巨星は、不安定で、ゆっくりと膨れたり、縮んだりしています。 主な赤色巨星は、 さそり座アンタレス、 オリオン座ベテルギウスなどがあり、 これらは死を間近に控えた星たちなのです。


星の生涯のうちここまでは、どの星もおなじ道を歩んできます。しかし、こ れ以降、星のたどる道はその星の重さによって異なります。
それぞれの星が歩む道について、みていきましょう。

0.1M 以下の星(太陽の0.1倍の重さの星)

核反応は起こらず、そのまま潰れ、暗い低温の星になります。
これを褐色矮星といいます。

0.1〜7Mの星(太陽の0.1〜7倍の重さの星)

中心核で、水素とヘリウムの核反応が進み、 惑星状星雲 の時期を経て、白色矮星 になります。

7〜10Mの星> (太陽の7〜10倍の重さの星)

中心核で水素、ヘリウム、炭素の核反応が進みますが、炭素の核反応が暴走して、 超新星爆発を起こし、 星全体を飛散させ、後に何も残りません。

10〜30Mの星 (太陽の10〜30倍の重さの星)

中心核で、水素、ヘリウム、炭素から鉄合成までの核反応が進みます。 最後は、超新星爆発を起こして飛散し、、中心に 中性子星が残ります。

30M以上の星 (太陽の30倍の重さの星)

水素、ヘリウム、炭素、酸素、ケイ素の核反応で鉄元素を合成したあと、 超新星爆発を起こして、飛散したあと、 ブラックホールが残ります。



華麗な最期

超新星爆発

超新星爆発とは、星の最後の晴れ姿です。

前のページで説明したように、ある一定以上の質量をもった星たちは、 超新星爆発を起こして、その一生を終えます。
超新星爆発の記録としては、1054年におうし座でみられたかに座星 雲が有名です。超新星爆発は、銀河系のなかで、30年〜100年に1 個程度で起こると考えられています。しかし、実際には暗黒星雲の向こ うで起こったり、地球から観測できないことが多く、観測されているの はほんの10数個です。

超新星の残骸は、はじめ勢いよく膨張し、だんだんとスピードが遅くなります。 つまり、古いものほど大きく広がっており、周りの星間雲と衝突したりして、 次第に形が壊れていきます。

超新星爆発は星の進化の過程を確かめる絶好のチャンスです。一般の観測 では、星の表面のことしか分からず、なかなか内部のことを直接確かめる ことは難しいことです。しかし、超新星の場合、外側がすけ、内側が直接 見え、どのような核反応が起きているのか確かめることができます。
超新星のおかげで、星の理論を確実なものにすることができるようになったのです。


死後の世界

星は、幽霊となっても、それぞれの役割を果たさなければなりません。

星は、その質量によってそれぞれの道をたどっていくことはすでに説明し た通りです。
ここでは、カンオケに入った星たちについて説明していきます。

白色矮星

主系列星時代、太陽質量(M)の 7倍以下の星がたどり着くのが、白色矮星です。
ゆっくりと冷えつつある星で、太陽もあと50〜60億年もするとこうなります。 白色矮星の大きさは、ほぼ地球くらい。質量は、太陽と同じくらいです。 したがって、内部はかなりの高密度で、1立方センチメートルあたり1トン もあります。ということは、当然、重力も恐ろしく強くなります。
このような星は、どうやって支えられているのでしょうか?

太陽のような星は、物質が電離したガスの状態のため、自分の重力をこのガスで 支えています。しかし、白色矮星は、ガスの力ではなく、『電子の圧力(電子の縮退圧) 』で支えています。この力は、温度に左右されないため、冷えつつあるこの星をささる ことができるのです。
白色矮星になってしまうと、核反応はおきません。つまり、エネルギーを生成しな いので、冷えていくだけですが、大きさは変わりません。

中性子星とパルサー

主系列星時代、太陽質量の10〜30倍の大きさの星がたどり着くのが中性子星です。 これは、素粒子の中性子でできている星のことで、直径10kmほどですが、太陽と 同じくらいの質量をもっています。当然、密度は非常に大きく、1立方cmが10億 トンもあり、重力もとても強力です。

中性子星をささえているのは、『核力』です。核力とは、原子核を作っている陽子と 中性子がバラバラにならないように引き留めておく力のことです。密度が高くなると、 粒子と粒子の距離が狭くなり、核力の性質から核力が「斥力」に変わり、この斥力で中 性子星の強い重力を支えています。

中性子星は星が超新星爆発を起こしたとき、核の部分が高い圧力で押し潰されて できました。同時に、強力な磁石の性質ももっています。 中性子星は、非常に速い速度で自転しているので、磁場の強い極から電波や光のパ ルス(信号)を出しています。回転しているサーチライトのようなものです。

こういったことから中性子星は、パルサー(パルスを出す天体)ということがわかりま した。有名なものに、かに星雲があります。「かにパルサー」は、1秒間に30回 という周期で、電波のパルスの点滅を繰り返しています。この周期は中性子星ができ てからの年齢にしたがって、徐々にのびていきます。現在発見されたパルサーは55 0個ほどあり、そのなかで「かにパルサー」が一番周期が短く、できたばかりである ことも確認されています。

パルサーは、あまりにも規則的な周期の信号を放つため、『これは、宇宙人からの通信 電波に違いない。』と騒がれるほどでした。

ブラックホール

ブラックホールは、最も重くて崩壊する恒星の核が消滅した場所にあらわれます。 中性子星以上に重力が強くなると、それを支えきれる力はありません。したがって、 重力は崩壊してしまいます。 重力による究極の産物であり、そこからはどんなものも永遠に出てこれないほどの 重力をもっています。

ブラックホールの内と外の空間は、「ふつう」の空間のように連続的ではありません。 この境を「事象の地平面」といい、これは完全な「一方通行」です。つまり、入ること はできても、外へ出ることは絶対にできない、アリ地獄のようなものです。



星は、最期にかなりの量のガスを放出します。惑星状星雲→白色矮星へ変わるときは 静かに、超新星になるときは激しくガスを放出します。これらのガスがまた星間雲と なり、そこから新しい星が生まれます。宇宙は、このサイクルを幾度となく繰り返し てきました。

宇宙には始め、元素は水素とヘリウムしか存在していませんでした。ですから、最初に できた星は水素とヘリウムだけから生成されました。赤色巨星→超新星爆発と進化する につれて、重元素が宇宙空間に飛び散り、星間雲に混じります。その星間雲からまた 同じように星が生まれ、そこには新たな重元素が含まれています。この繰り返しによっ て、宇宙空間の重元素の割合が次第に増えてきます。

人間の体を作っている炭素、カルシウム、鉄、リン、塩素の重元素は、超新星爆発を 起こして飛散した星の内部で合成されたものです。

太陽系ができるとき、地球は材料となる重元素をかき集めるようにして形成されまし た。だからこそ、この地球には重元素が豊富で、そこから生命が誕生することになった のです。宇宙に重元素が存在し得なかったころには、わたしたちも存在できなかった。 星たちが、何度も超新星爆発を起こしてくれたおかげで、私達は今ここに存在すること ができるのです。




Written by Harumi Fujishima