更新日 2017-03-03 | 作成日 2007-12-04

大分川への海水の進入

佐藤加奈・井本知美・佐藤祥子・西垣肇

河口域の特徴

河口近くの河川と海洋では,海水(塩水)と河川水(淡水)が混在・混合しています。このような水域を「河口域」といいます。河口に近い河川下流域では,基本的には下層から海水が進入します(図1)。海水・河川水の分布は,図2の3つの典型的なパターンに分類されます。

section図1:河川下流域における海水の進入。
esturary-fig-b.png図2:河口域における海水・河川水の分布

目的と調査場所

大分川河口域で海水・河川水の分布パターンがどのようになっているのかを調べるため,この調査を行っています。主に次の2ヶ所で調査を行っています。1つ目は最も下流に位置する弁天大橋で,2つ目は少し上流側の滝尾橋です(図3)。これらの地点では,海洋潮汐に伴う水位の昇降が見られます(図4,5)。

map図3:調査地点。
water level #1図4:弁天大橋における干潮時(左)と満潮時(右)の水位。 西大分港の干潮は 11/2 14:24,満潮は11/3 09:28(いずれも予報値)。水位差はおよそ1.4m
water level #3図5:滝尾橋における干潮時(左)と満潮時(右)の水位。水位差はおよそ0.6m

調査方法

CTD sensor図6:CTDのセンサ部分。大分川河口域での干満による水深や水温,塩分の変化を調べるために,採水器やCTDを使って調査を行っています(図6~8)。CTDは,水の電気伝導度(塩分),水温,圧力(深さ)を測る機器です。センサを水中に沈めて深さごとの塩分・水温を測定します。

observation図7:橋上での観測。P1020512c.png図8:ゴムボートを用いた観測。

結果(その1)

benten-s-seasonal-b.png図9:弁天大橋における塩分の鉛直分布。
弁天大橋における塩分と水温の分布を図9に示します。 2006年6月28日 (J) ,9月25日 (S),12月22日(D),2007年3月22日 (M) の結果です。
 6月,9月,3月には表層に低塩水や淡水が下層に高塩水(海水と同じくらいの塩分です)が,その中間には躍層(塩分の勾配が大きい層)が,それぞれみられます。
 滝尾橋での観測結果を併せて検討すると,これらは弱混合型(塩水くさび型)の分布と考えられます。
 12月には表層から下層まで高塩水がみられます。

結果(その2)

benten-t-seasonal-b.png図10:弁天大橋における水温の鉛直分布。
弁天大橋における水温の分布を図10に示します。水温は,表層と下層の差が小さいですが,6月と9月には表層が少し低温です。河川水よりも海水のほうが温度が高いことがわかります。
 12月には海水と河川水の鉛直混合が強いことがうかがわれます。その理由として,河川流量がこの時期に比較的少ないことがあげられます。

結果(その3)

iwave-series.jpg図11:2008年5月12日観測の,深さ0.9 mにおける電気伝導度の短時間変動。
 弁天大橋において,電気伝導度(塩分)の短時間変動を観測しました。結果の一例を図11に示します。この結果は表層低塩水と下層高塩水の境界が上下にゆれていることを示します。赤線は元のデータ,黒線は周期8秒以下の変動を落としてなめらかにしたものです。
 短時間変動には周期5秒の変動が卓越しています。(赤線)。その他,周期17秒,51秒の変動も比較的強くみられます(黒線)。

結果(その4)

ssec.jpg図12:観測された塩分の断面分布。
 滝尾橋から広瀬橋にかけての塩分の断面分布を,図12に示します(2010年10月22日観測)。表層1 mでは塩分がほぼ0です。中央部の深みに高塩分(海水並み)がみられます。その下流側下層(右側下部)ではこれよりも低塩です。
 まず深みに高塩水が進入し,その後,下流側で表層水と下層水が混合して下流側下層の塩分が低下したものと考えられます。




2006年作成,2012年8月最終更新