研究概要
     2015.4.1
 
 大学を取り巻く環境は、21世紀に入ってから大きく変化しました。産官学が連携して共同研究を行い、その成果について経済的な波及効果も期待されるようになりました。
 少子化に伴って18歳の人口が減少する中、それぞれの大学がそれぞれの個性を打ち出していかなければ大学を維持していくことは困難な時代になりました。先だっての国立大学のミッションの再定義において、大分大学は地域密接型大学として地域に貢献することの重要性が明確になりました。大分大学は、教育研究面での地域との連携がより一層重要になるものと思います。地域の活性化のために地域の大学の役割が期待されているのです。地域に存在する物的資源、人的資源、知的資源を有効に使い、軽いフットワーク体制のもので地域から発信する研究を行っていかなければならない時代になりました。この期待に応えられなければ地方の大学の明日はないと考えるべきでしょう。
 この研究室では産学官の連携による共同研究がそれほど注目されていない頃から大分県の食品・食品素材を対象に研究を行ってきました。というより、そういう形の研究をせざるを得ませんでした。いろいろな資源が不足する中で、大学だけでは対応できないことを県内企業・公設試験場・他大学の力を借りて研究を行ってきました。多くの共同研究を行っていく中で、いくつかのテーマは外部に向けての発信ができたかなと思っています。


<研究に対する考え方>

 大分県内企業との共同研究を最優先として、商品化につながる研究を目指しています。特に機能性の研究は、企業単独で動物飼育施設を設置して検討することは難しいのが現状です。そこで、私たちの研究室が企業の研究所の一部門といった感覚でそれぞれとの共同研究を行っています。学術論文を作成するための研究に固執するのではなく、スクリーニング的な実験を行うことが多くなりました。年々学術論文の公表数が減少していることがジレンマとなっています。
 企業との共同研究で大切なことは機密保持と素早い対応である考えています。研究途中の成果はもちろんのこと、共同研究を実施している企業がどこであるかといったことについても、成果を公表するまではまったくの秘密です。また、企業のニーズに応じて臨機応変に実験を進めることを心がけています。下記に示した研究テーマもこれまでの得られた成果についてまとめたもので、現在進行中でここには記載していないものもいくつかあります。


<研究テーマ>

1.ラットを用いての食品及び食品関連物質の機能性の評価

1)発酵大麦
 大麦焼酎を製造したあとに残る大麦焼酎粕は従来海洋廃棄されていましたが、海洋投棄が禁止され、陸上での利用を考える必要が緊急課題となりました。そこで大麦焼酎粕の家畜飼料としての利用について検討し、その有用性を確認しました。次に、大麦焼酎粕の機能性に着目し、ラットを用いて検討を行ったところ、脂肪肝の抑制や肝炎の予防効果などが明らかになりました。そこで、大麦焼酎粕は「粕」ではないという考え方になり、「「発酵大麦」と呼ぶことにしました。発酵大麦からいろいろな成分を分離し、その機能性の検討を進めています。最近は脂肪肝の予防作用について重点的に検討を行っています。

2)カボス
 大分県の特産品であるカボスの種子に着目した研究を行っています。カボス種子の中に含まれているリモノイドに、肝障害を予防する作用があることを明らかにしました。この知見に基づいた実用化が期待されています。

3)しじみエキス
 昔からしじみは肝臓によいと言われていますが、これを科学的に証明した研究はほとんどありません。そこで特にメタボリックシンドローム予防機能に関する影響を検討しています。
この研究は各方面の研究者の力を借りることによって、大きなプロジェクトになっています。それぞれの分野に強みをもつ研究者に集まってもらい、テーマを分担することによって、大きな成果が上がっています。
ネットワークの大切さを実感する研究となっています。

4)ユズ
 ユズの機能性に関する研究を始めました。この研究は大分大学の他の研究者とのプロジェクトです。大学内での共同研究は大学の体力を大きくする上で非常に有効な手法であると思います。

5)その他
 大分県内の企業や公設試験場との共同研究によって、大分県の他の食品・食品素材の機能性についても検討を行っています。いろいろなお話を伺う中で、大分県内にはまだ多くの地域資源があるなぁと思います。
また、大分県内の他大学との強固な共同研究も始めました。私たちの研究室の強みを活かし、弱みを他大学の研究者の力を借りることによって、大きな成果に結びつけようという魂胆です。相手先の大学も、その強みを活かすことができる「ウィン・ウィン」の関係で進めています。


2.魚類の死後変化と鮮度保持に関する研究

1)関あじ・関さば
 マサバ及びマアジの死後変化に致死条件や貯蔵温度などの条件がどのように影響を及ぼすかを検討してきました。その結果、佐賀関で経験的に行われている処理方法が死後変化を遅くするために最も最適な条件であることを明らかにしました。また筋肉の軟化に関与すると言われているV型コラーゲンの分解についても検討を行っています。また、関あじ・関さばを使った加工品の開発研究会に顔を出して、科学的な見地から関わっています。

2)養殖ブリの品質評価
 最近大分県が力を入れている「カボスぶり」の品質評価の研究を行っています。カボスを添加した飼料を魚に与えることによって、魚の味がどのように変化するかについて、成分量を分析することによって検討を行っています。
科学的分析も大切ですが、消費者が評価しなければ意味はありません。
カボスぶりの特徴を明らかにし、その特徴を評価する消費者の元へ届けるということが必要ではないかと思います。


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